目次
今回のテーマは「ビジョン」です。
ビジョンという言葉はよくビジネスで使われますが、日本語に訳せば未来像。
ビジョンのイメージが自分のものなのか、誰かや何かの借り物なのか。
そういった内容が、今回の焦点になります。
孤立無縁のときは、甘い誘惑に騙されやすい
暗殺教室の中で、唯一クラス全体での暗殺に積極的に参加していない集団がある。
それが寺坂グループと呼ばれる、寺坂竜馬率いる不良集団。
しかし、唯一ずっと一緒にいた村松と吉田がクラスに溶け込もうとしていて、ますます居心地の悪さを感じ孤立していく寺坂。
彼の存在に目をつけた謎の白装束・シロに誘われ、殺せんせー暗躍のために金で買収される。
そんな寺坂を見て、殺せんせーの刺客として送り込まれた堀部糸成は、寺坂自身に「ビジョン」は何も持っていないことを指摘され、言い返せずにいた。
そして、寺坂はシロの指示で、クラスメイトに殺せんせーを殺すために命令。
生徒たちは仕方なく付き合うことになったが、潮田渚だけは彼の言動に違和感がして尋ねてみた。
「本気で殺すつもりがあるのか?」と。
すると、寺坂は——
俺はテメーらと違う
楽して上手に殺るビジョンを持ってるんだよ
そのセリフを聞いて、渚は寺坂の自信のある言葉とは裏腹に、「自分」に自信を持っているようには感じられなくて。
どこか借りものの台詞な気がして、胸騒ぎがするのであった。
言葉は辞書的意味だけ?
今回のビジョンの時間には、2つのポイントがあります。
一つは、ビジョンは一見同じように見えても、過程が異なるかもしれません。
実際に、暗殺教室ではシロが話した上辺のだけのビジョンを信じた寺坂は、結果的に騙されて、クラスメイトを危険に晒してしまうことになります。
もう一つは、ビジョンに限らず言葉には辞書的意味以外の何かがあります。
言葉には魂が宿る、と言われており、言魂——言霊とも呼ばれています。
日本で特に言霊の力が信じられ、文献として初めて登場した時代が、奈良時代です。
奈良時代末期に作られた現存する日本最古の和歌集「万葉集」。
その万葉集には山上憶良の歌が複数あり、彼の歌の一つ「好去好来の歌」に言霊という言葉が登場します。
(原文)
神代より 言ひ伝て来らく そらみつ 倭の国は 皇神の 厳しき国 言霊の 幸はふ国と 語り継ぎ 言ひ継がひけり 今の世の 人も悉 目の前に 見たり知りたり(日本語訳)
好去好来歌(万葉集 巻5 894年)
神代から言い伝え来ることには、空に充ちる大和の国は、統治の神の厳しき国で、言霊の幸ある国と語りつぎ言いついで来ました。今の代の人も皆、この事は眼前に見、知っています。
大和の国——つまり、日本は言霊の幸ある国として語り継いできたと憶良は詠んでいます。
単なる文字としての言葉ではなく、語られている言葉を大事にしていたからこそ、自分の想いを和歌に込める文化が栄えていたのかもしれませんね。
ちなみに、この憶良の歌は、遣唐使として派遣される多治比真人広成に贈った歌と言われています。
当時、船に乗って唐に渡るのはそれこそ命懸け。
それに挑む広成に、航海の無事を祈る歌の冒頭に登場する言霊という言葉。
現代よりも、言霊の重みを理解し、日常的に使っていたからこそ、和歌や短歌などに即興で想いを込めることができたんだと思います。
自分の話す言葉に気を付けてみる
言霊の存在については、ぼく自身も感じる瞬間が度々あります。
きっと皆さんも日常生活で感じることはきっとあるはずです。
例えば、「ありがとうございます」という言葉を言われるだけで、とても嬉しい気持ちになる。
相手がどんなに謝罪の言葉を述べてきても、まったく誠意が伝わってこない。
公言している言葉に、どこかウソくささを感じるなど。
なので、今回の寺坂のように、誰かに言われた言葉をただ上辺だけ汲み取り、誰かに伝えたとしても、自分の意図することとは全く真逆のことが相手に伝わる可能性が高い。
そのことを知っているだけでも、自分の話す言葉に気を付けるきっかけになるでしょう。
今回は殺せんせーのシーンではないですが、読み返したときにフッと目に留まったシーンだったのでピックアップいたしました。
ビジョンが格好良く、もっともな感じに書かれていたらつい言葉の意味に引っ張られてしまいがち。
けれど、発する言葉を感じ取ることで、渚のように相手の状態がわかるのかもしれませんね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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