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芥川龍之介の桃太郎
次は、舞台の期限前後の日本で、芥川龍之介さんの小説である『桃太郎』です。
芥川さんの小説における桃太郎は、物事を一つの視点で見ることの危うさについて説いていると言われています。
いろんな方が、小説について解説してくださっているので、動画やブログでご覧ください(^^)v
童話で伝わっている話は実話?
すでにいろんな方が解説してくださっていますので、ぼくが今回『桃太郎』をピックアップした理由について記事にまとめていきます。
まず、『桃太郎』の話に興味を持つきっかけは、10年ほど前に岡山にある吉備津神社・吉備津彦神社に参拝したこと。
そこで桃太郎のモデルとなった吉備津彦命と、鬼のモデルとなっている温羅(うら)に話を知って、疑問に感じることがありました。
- ヤマト王権に所縁のない地なのに、住民からの要請で天皇家に連なる人間(吉備津彦命)が動くのか?
この疑問について調べてみます。
10代天皇である崇神天皇についてウィキペディアで調べてみると、この一文が気になりました。
四道将軍を派遣して全国を教化すると宣言した。大彦命を北陸道に、武渟川別を東海道に、吉備津彦を西道に、丹波道主命を丹波(山陰道)に将軍として遣わし従わないものを討伐させることとなった。
ウィキペディア「崇神天皇」
西道とは今でいうと山陽道のことを指し、バッチリ岡山県も通ります。
一文にある「従わないものを討伐させることとなった」という部分からすると、もしかしたらヤマト王権に従わなかった温羅、または吉備を統治するために作り上げた可能性があります。
というのも、吉備津神社の本来の祭神を温羅であり、ヤマト王権に吉備が服属して以降に祭神が入れ替わったと推察している説があるからです。
真偽はもちろんまだわかっていないようですが、歴史は勝者の視点で語られるという特徴からすると、侵略や討伐ではなく、吉備の人々を救うための戦いだったという大義名分をつくった可能性は十分あります。
そのため、童話・物語として正義の味方の話『桃太郎』を作り上げ、暗に正当化していったのでは?
そんなことが気になり出して、参考になる本として見つけたのが芥川龍之介さん著書の『桃太郎』だったのです。
真偽を求めるのではなく、自分で考えてみる大切さを気づかせてくれる本
推測していることについて、伝わっている話が間違っているという話をしたいわけではありません。
以前、映画『いまを生きる』の記事でも書きましたが、物事は一方だけでなく、いろんな角度で視ることがとても大切だとぼくは考えています。
TVや新聞、ネットなどで権威者や有名人、その道のプロが言っているからと言って、その人が言っていることが真実とは限りません。
それは、過去の歴史を紐解いてみても言えます。
例えば、明治時代以降で言いますと、日清・日露戦争における脚気の誤った情報を信じた陸軍では被害が甚大になってしまったこと。
四大公害病の一つとして知られている水俣病が、利権がらみのせいで原因が発覚してから10年以上経ってようやく公害認定されたことなど。
鬼=悪者という認識が強いと、その真偽について疑うことなく鬼は悪者だと当たり前に信じてしまいがち。
芥川龍之介さんの『桃太郎』は、そんな当たり前と向き合うきっかけをくれる良本です(^^)v
ちなみに、『桃太郎』の時代は崇神天皇が即位していた時代だとすると、紀元前1世紀頃です。
この時代は中国では秦が滅びた次の王朝である漢の時代(前漢末期)。
秦が中華統一したものの、各地で絶え間なく争いが続いていた時代でもあるので、戦火を逃れて中国や朝鮮半島から逃れた人がいても不思議ではありません。
具体的には稲作が始まった弥生時代は約前5世紀〜3世紀頃と言われており、中国では春秋・戦国時代〜後漢にかけてなので、「従わないものは討伐する」という戦国時代ならではの思考が、日本に根付き出した時代とも言えるのではないでしょうか。